生活の必需品「石けん」

石鹸の種類と環境

石鹸が環境への影響

環境への影響として、石鹸が合成洗剤より環境への影響が小さいとされるいるのは、環境中で石鹸分子の界面活性剤機能が速やかに失われる事と、最終分解までの期間が短いことが環境へ配慮されている根拠となっています。 ただし、石鹸と同じ用途で使われる合成洗剤製品には多様な副成分や、添加剤が使われているので、主成分のみの比較ではあまり意味はないでしょう。

毒性

生物細胞は細胞膜表面で重要な物質代謝を行っています。細胞膜は繊細な界面(ここでは水と油が接触する境界面)で成立しているので、試験管内での細胞毒性試験で界面活性剤を作用させると機能を失って、死滅します。このことから、石鹸や合成洗剤などの界面活性剤は特に水生生物への毒性が強く出て、環境中に一定濃度以上存在すると生態に悪影響を及ぼす事になります。

しかし石鹸は硬度成分(カルシウムとマグネシウムイオン)の封鎖によって親水性を失うことになり、水に溶けない金属石鹸(石鹸カス)となります。また、バクテリアによる資化で脂肪鎖の親油性も低下しやすくなります。このように界面活性力を失うことで毒性も消失します。

魚毒性試験では、石鹸(脂肪酸ナトリウム)の半数致死量は 100 mg/L 前後と、1–10 mg/L の合成洗剤(LASなど)より弱い毒性を持ちますが、実験室という環境なので硬度の供給が無くバクテリア濃度も低い事から、値が小さくなっています。

一方合成洗剤は、硬度の影響を受けない商品としての特長と、安価な合成樹脂を原料とする製品としての特長から、界面活性力が持続して毒性も継続します。代表的なLASの場合には、直鎖末端のアルキル基が酸化されてカルボキシル基となると親油性が大きく低下します。但しこの反応は底質など酸素の乏しい環境では進行しないので、水中の固形物に吸着されて沈殿すると残留しやすくなります。下水処理で汚泥中に残留するのはこのことが理由になっています。

分解性

石鹸は、原料油脂を脂肪酸とグリセリンに分解した脂肪酸なので、石鹸カスは原料の牛脂やヤシ油が半ば消化されたものに相当します。環境中ではバクテリアや水生生物が積極的に摂取するので、一時分解性、完全分解性ともに高くなっていて、環境中での半減期が短いことから環境負荷が低いとされています。

ただしこの事は、BODが高くて水中の溶存酸素の消費速度が大きいことも意味するために、酸素の供給が乏しい止水域では酸欠リスクを強めることになります。また、用水の硬度が高い地域では使用量を増やす必要から、有機物負荷量が高くなります。逆に著しく低い場合には、親水性が残留して毒性低下が遅れる可能性があります。

合成洗剤の代表的な化合物の場合には、BODが47%と5日間でほぼ半減していますが、石鹸よりは遅い事になります。また、魚の場合体内の半減期が1~6日間と資化に時間がかかることから、蓄積性を持っています。

石鹸の種類

目的別

化粧石鹸

身体洗浄用です。洗顔用、浴用などです。「合成固形石鹸」は石鹸ではありません。固形・粉石鹸はナトリウム石鹸で、液体石鹸・シャンプー・ボディーソープは溶解度の大きいカリウム石鹸です。また、ナトリウム石鹸・カリウム石鹸を併用したものもあります。日本の薬事法では化粧品として扱われています。

薬用石鹸

殺菌消毒用です。身体の一部や食器、ふきんなどの殺菌消毒を目的しています。「逆性石鹸」や「両性石鹸」は石鹸ではありません。トリクロサンやトリクロカルバンなどの殺菌成分を配合したものがあり、日本の薬事法では医薬部外品として扱われています。

洗濯用石鹸

手洗い向けの固形石鹸と、洗濯機向けの粉石鹸です。合成洗剤より高くなっていますが、水質汚染、皮膚炎、蛍光剤による衣類の退色を避ける効果が期待できます。水温が高いほど洗浄力が上がるのでら、風呂の残り湯を利用することが可能です。また、石鹸カスの残留によって黄ばみを抑える効果のために、酢やクエン酸が使われています。

台所用石鹸

使用済み食器の洗浄、食品の寄生虫卵除去用です。食器が滑りやすく、破損リスクが高いという欠点があります。近年普及した食器洗い機は構造上石けんが使用しにくいのですが、成分を調整した製品もあります。

雑貨石鹸

法令対象外の石鹸をこう呼ぶ場合がありますが、法令上の名まえではありません。中には、ペット用石けん、輸入石けん、手作り石けんなどが該当します。販売するときには、化粧石けん、薬用石けん、洗濯用石けん、台所用石けんといった石けんの用途を謳うことができないという制約があります。

石鹸の形状別

鹸化に使用するアルカリによって固まりやすさが変わるので、固形と液体は製造段階で分かれています。水酸化カリウムで鹸化したものはカリ石鹸(脂肪酸カリウム)、水酸化ナトリウムで鹸化したものはナトリウム石鹸(脂肪酸ナトリウム)と呼ばれていて、カリ石鹸はナトリウム石鹸より融点が低くなっています。

固形石鹸

ナトリウム石鹸を手に収まるサイズに成形したものです。洗濯石鹸ではキログラム単位のものもあります。乾燥するとひび割れる事から、防湿包装されています。プラスチック包装が普及するまではパラフィン紙(グラシン紙)で包まれていました。

紙石鹸

固形石鹸を紙のように薄く削いだものです。手洗い一回分として携帯用や、女の子向けに駄菓子屋さんなどで売られていました。

粉末石鹸

主に洗濯用石鹸の形状です。必要量を計量しやすくて、粉末のため溶かしやすくなっています。

液体石鹸

常温でゼリー状から粘液状になるカリ石鹸を適度に加水したものです。固形石鹸より割高ですが、洗浄効果や節水効果が期待される他にも、ホテルなどの宿泊施設ではコスト面でもお得になっていおます。(減った分だけ補充することが可能)固形石鹸よりは割高になっていますが、家庭用も含めて一般施設でも広く普及しています。手洗い用(ハンドソープ)と身体用(ボディソープ)が多くあり、手洗い用には殺菌と洗浄効果を重視していて、身体用のは香料や保湿などを重視しています。液状以外にもゲル状、泡状(プッシュ式容器による)の製品があります。